過ぎ去りし王国の城/宮部みゆき
過ぎ去りし王国の城/宮部みゆき
読みました。
主人公は、中学校3年生の尾垣真。
彼は、ひょんなことから一枚のデッサンを拾う。
デッサンには、ヨーロッパの古城が描かれていた。
その絵は、絵の中にアバター(分身)を書き込むことで、その絵の世界の中に入りこむことができる…という不思議なもの。
絵の得意な美術部の同級生・珠美にアバターを描いてくれるよう依頼し、ともに絵の中の世界を旅するように。
そして、その絵の中の城に一人の少女が閉じ込められていることを発見する。そして、その少女は10年に失踪したとされている少女だった…。
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宮部さんの小説、結構たくさん読んでいるんですが
一番好きな作品は【ICO】。
ゲーマーである宮部さんが同名のゲームをノベライズ化したものです。(厳密にはオリジナル作品とは言えないかも…)
ICOというゲームは、簡単に言うと「幽閉されている少女を城から助け出し、自分も脱出する」ゲームなんですが
その静かで美しい世界感に、ファンも多い作品です。
ゲームもめっちゃ良いんですが、宮部さんの描く小説版ICOも素晴らしくって。
読んでいる時間、ちゃんとファンタジーの世界が脳内に広がって。
目を閉じれば映像が浮かんできそうなくらいの風景描写と、その世界に浸ることを邪魔しない美しい文章と。
ゲームを愛している方だからこそ、この小説が誕生したんだろうなぁと読んだ後に思いました。
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話が逸れましたが、
そんな宮部みゆきさんが描く、ゲームっぽい作品でした。
アバターに入って、絵の中の古城を冒険する。
ICOの時と同じく、絵の中の世界は簡単に自分の脳内に浮かんできて読んでいて楽しかったです。
ただ、ICOの時と違うのは
これは宮部さんが書くミステリー小説だということ。
城の中に閉じ込められている少女は、失踪したはずの少女。
彼女を助け出せたら、今いる世界にいないはずの人間が存在することになり
世界が変わる可能性がある。
絵の中を冒険するメンバー3人のうち2人は、人生をやり直せたら…と思っていて。残り1人は、今の人生はそこそこだけれど悪くないし変わってほしくないと思っている。
どうすることが正しいのか。
思い悩む3人の姿が印象的でした。
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冒険を終えた後、自分を取り巻く世界がほとんど変わっていないことに気付いた主人公たち。
家庭環境が複雑で、世界が変われば幸せになれるかもしれないと願った少女・珠美は
「世界がほとんど変わらなかった」ことにガッカリしているかと思いきや
予想外にあっけらかんとしていて。
珠美に、「ショックじゃないの?」と尋ねると
『世界が変わらないなら、自分を変えるまで』
と言い切ります。
このシーンが、私はとても好きです。